テレワークの定義
今年(2020年)になって本当によく耳にする「テレワーク」という言葉。実は政府が推進する働き方改革の一環としては、コロナ禍より前、2016年度から正式に推奨されているICTを利用した新しい働き方です。
一方昔からある「在宅勤務」という概念。「テレワーク」と混同して使われることもしばしですが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか?
「テレワーク」は政府見解の元総務省や厚生労働省など官公庁が公式に定義しているため概念は揺るぎませんが、どうやら「在宅勤務」という言葉の見解によってさまざまな解釈があるようです。
今回は「テレワーク」と「在宅勤務」の違いについて解説していきたいと思います。
1. テレワーク>在宅勤務という考え方
まず、もっともポピュラーな「在宅勤務」=「在宅型テレワーク」という考え方から解説します。この場合、在宅勤務はテレワークの一形態であるととらえます。
・テレワークはリモートワークとも呼ばれオフィスに出社せず他の場所で業務に当たる働き方ですが、就業場所によって下記のように大きく3つに分けられています。
「在宅型」
オフィスに出社せず社員の自宅で業務をすること。
「モバイルワーク」
移動中(電車・バス・飛行機等)や外出先(カフェ・訪問先のオフィス等)で業務をすること。
「サテライト型」
自社のサテライトオフィスやテレワークセンターと呼ばれるシェアオフィス、またはコワーキングスペースなどで業務をすること。
・在宅勤務とは労働の一部または全部を所属先であるオフィスで行わずに自宅で行うことを指しますので、テレワークの概念では「在宅型テレワーク」に当たります。
つまりこの考え方では在宅勤務はテレワークの一部ということになります。
2.テレワーク≠(ノットイコール)在宅勤務
次に、テレワークと在宅勤務は「似て非なるもの」であるという考え方をご紹介します。
この考え方は幾つかの根拠がありますが、代表的なものをご紹介します。
「雇用型テレワーク」と「自営型テレワーク」
政府が働き方改革の一環として推奨しているのは企業の所属しながらオフィス以外で勤務する「雇用型テレワーク」という働き方ですが、テレワークには他にも企業の属さずフリーランスとして業務を受注する「自営型テレワーク」もあります。
・自営型テレワーカーの多くはSOHO(Small Office Home Office)といって自宅で業務に当たるため、しばしば在宅勤務と同義でとらえられています。
「自営型テレワーク」の定義
しかし「自営型テレワーク」に明確な定義があり、厚生労働省によると次のようにされています。
「自営型テレワークとは、注文者から委託を受け、情報通信機器を活用して主として自宅又は自宅に準じた自ら選択した場所において、成果物の作成又は役務の提供を行う就労」
「在宅勤務」の定義
・一方、在宅勤務には明確な定義はないのですが、前述の在宅型テレワークと同義であるというほかには、「自宅で業務に当たることすべてを指す」という考え方もあります。
例えば大辞林においては「勤め先に出勤せず、自宅で業務を行うこと」というように柀雇用者としての立場と取っており自営型テレワークには当てはまりません。
「在宅型テレワーク」
ただし、雇用型テレワークの一種である「在宅型テレワーク」にはICT技術を使用する範囲においては同義であるため、ややこしくなりますが下のように整理する事が出来ます。
「在宅型テレワーク」≒(ニアリーイコール)「在宅勤務」≠(ノットイコール)「自営型テレワーク」
3.在宅勤務>テレワーク
もう一つは今まで解説してきたものと全く逆の考え方であり、あまり一般的ではありませんが、テレワークが在宅勤務の一形態であるという考え方です。
「ICTの利用」
在宅勤務は広義では「在宅で勤務する」という考え方は前述しましたが、その場合、自宅での勤務であればICTを利用しなくともよいということになります。
一方、テレワークはICT技術を利用して遠隔で行う業務に限られるため、「在宅型テレワーク」は「在宅勤務」の一形態である、と読み解く事も出来るのです。
テレワーク≒在宅勤務≠内職
様々な解釈があり整理が煩雑になりがちな在宅勤務とテレワークですが、江戸時代から家庭内で行われてきた歴史の深い「内職」とは一線を引く事が出来ます。
内職は「家内労働法」という法律で公式に定義されている働き方ですので、在宅勤務とは明確に区別されています。家内労働者の権利をまもる法律が整備されている点も在宅勤務やテレワークとの違いです。
時代の流れと共に雇用型テレワークが広まっていけば法的な整備も進むと考えられますので、現在あいまいなテレワークと在宅勤務も明確に規定される日が来るかもしれません。
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