テレワークはまだ「ゆりかごの中」
テレワークは大きく分けて自社の社員として雇用契約を結んでテレワークを導入する「雇用型」と、社外のワーカーと業務委託契約を結ぶ「自営型(非雇用型)」に分類されます。
我が国では自営型テレワークはICT技術の進化に比例して増加して来ましたが、雇用型テレワークの増加率はそれにおよばず、総務省は「未だ揺籃(ゆりかご)期」と位置づけています。
政府は2020年度までに雇用型テレワークの導入企業を2012年度(11.5%)比の3倍に、全労働者に占める割合の10%以上に増やすという具体的な目標を掲げており、各種助成金など制度面も整備されてきました。
しかし、自社で実際にテレワークを導入するとなると費用対効果やメリット・デメリットがわからず消極的になってしまうこともあるかと思います。
そこで今回はテレワークを導入するメリット・デメリットについて解説していきます。
テレワーク導入のメリット
雇用型のテレワークには、自宅で勤務する「在宅型」、移動中や外出先で従事する「モバイルワーク」、他のオフィスや施設を利用する「サテライト型」と3つの特徴的な働き方があります。それぞれの特徴を活かしてうまく取り入れることで下記のようなメリットを見出すことができるでしょう。
「働き方のダイバーシティを推進することで人材確保や離職率低下が期待できる」
在宅型のテレワークを導入すると、育児や親の介護のために時短勤務やパート勤務を選択していた社員に活躍の場を増やすことができます。
また、家庭の事情で遠方へ転居し、通勤時間のもんだで退職を余儀なくされた社員にとって、在宅型、サテライト型のテレワーク導入は救いとなることもあります。
さらにサテライト型テレワークは法定雇用率の改正で認知度が高まっている障碍者雇用の促進にもつながります。
このようにワーカーそれぞれの条件にあったテレワークを導入することでネガティブな要素を取り除き、安定した人材確保につなげることができます。
「労働時間の確保がしやすく生産性が向上する」
在宅型のテレワークを導入することは社員のワークライフバランスの充実だけでなく効率の良い労働力の確保にもつながります。
首都圏や関西圏の平均通勤時間は片道約1時間、往復すると1日当たり約2時間のロスですが、この時間が削減されれば社員は通勤のストレスなく業務に集中することができます。
また勤務時間においても外出先などへの往復移動時間は単純な業務時間のロスになりますが、移動中に報告業務を行う等のモバイルワークを導入することで効率アップが期待できます。
企業、社員両方にとっての「デッドタイム」を可能な限り削減することによって質の良い労働時間を確保し、生産性向上につながる取り組みとして、テレワークは注目を浴びています。
「将来的なリスク回避・分散につながる」
各地にサテライト型のテレワークを導入することは、災害時のリスク分散につながります。
サテライトといっても立派な事務所を構える必要はなく、遊休施設や空き家、アパート・マンションなどの賃貸物件を利用して複数が業務にあたることができるスペースを確保することでスタートできます。
また、在宅型のテレワークも天候不良や事故などで交通手段がマヒした時でも稼働できるため、リスクの回避に有効な手段です。
テレワーク導入のデメリット
では、テレワーク導入のデメリットを見ていきましょう。
「労務管理が煩雑になる」
在宅型のテレワーカーが増えると労務管理が難しくなります。特性上常にチャットやSkypeなどで他社と連携しながらする必要がある業務が別として、デザインやシステム構築など納期に対して成果が求められる業務であれば、すべての労働時間を管理する必要はありません。
逆に言えば1日数時間だけしか働かなくても寝る間を惜しんで働いても決められた納期に成果物を出すことだできれば問題ないともいえます。
しかしこのままではテレワークを利用しない社員との労務管理方法に乖離が生まれるため一定のルールに沿った運用が求められるようになります。
この問題をクリアしなければ「テレワーク」=「特別措置」という認識から逃れられず、テレワークを利用する社員とそうでない社員の間に溝を作ってしまうことにもなりかねませんので注意が必要です。
「セキュリティ上の課題」
モバイルワーク型のテレワークは無駄な時間を削減し生産性が上がる半面、電車やバス、あるいはカフェなど公衆の面前で業務をすることで一定のリスクがありますので、運用ルールと社内教育が絶対に必要です。
また、在宅型やサテライト型でも仮想デスクトップ(VDI)やデータレスPCなどセキュリティ対策に万全を期す必要があります。
「人事評価が難しくなる」
テレワーク導入企業は、公平な人事評価制度の確立と評価者の教育も重要です。
人事評価は大きく分けて定量評価と定性評価から構成されますが、テレワーカーは業務のプロセスを評価しにくく定量評価の比重が重くなってしまい、オフィスで勤務している社員と異なった評価基準となってしまいがちです。
テレワーカーもそうでない社員も同様に公正な評価を受けられなければ不満が募り、離職率、生産性など全ての分野で導入が逆効果になってしまうこともあるので注意して運用していかなければなりません。
Comments